【連載】(タイトル未定)#15

※こちらは、超絶遅筆な管理人が、せめてイベントに参加する毎には更新しようという、

雨垂れ石を穿つ精神で投稿する長編(になる予定の)連載ページです。

状況により、過去投稿分も随時加筆修正予定。

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 白い砂浜を見遣る。魔物の残骸は波に洗われ、戦闘の痕跡は既に消えてしまっている。

「もう、3度目だね」

「そうだな。まぁ、ここ数日だけなら、魔物が頻出しているようにも見えるだろう」

 浜を見つめたルークが何を言わんとしているか、フレイにもわかった。

 だが、町の連中が知らないだけで、これまでに誰にも見られることなくフレイが始末してきた魔物の数など、10や20ではない。

「長い目で見りゃ、大した数が襲ってきてるわけでもねぇ。ただ、決まって『船』の近くに現れるってのは、確かに異常かもしれんな」

 側の『船』を見上げる。最初に見つけた時は朽ちかけて廃船のようだったが、修繕の目処が立ったと聞いただけあって、その外観は見違えるほど美しくなっている。とてもあの嵐の中を漂流してきたとは思えない。

 それだけに惜しい。だが、そうも言っていられない。

「こいつが原因なら……いっそ、壊すか」

 この『船』が、本当に魔物を呼んでいるのなら。いくら貴重な『古代文明の遺産』だとしても、人命には代えられない。フレイが必ず対処できるという保証はどこにもないのだ。

「それは……やっぱり、ちょっと勿体ないよ」

 ルークは、自分と同時期に浜に流れ着いたこの『船』に、親しみに似たようなものを覚えていた。

 どこからか流れ着いて、拾われて。だけど、得体は知れなくて。扱いに困って、それでも放り出すわけにはいかず、仕方なく置いてもらっている。

 ――似たようなものだ。だとしたら、これは同情なのだろうか。

「ま、考えたところでどうにもならねぇよ。当分は様子見だな」

 この先もこの『船』の側に、魔物が現れるのなら。いざとなれば、戦闘に乗じて破壊してしまう手もある。その時は非難されるだろうが、所詮、使い道のない船だ。

「あぁ、それと。これを渡しておく」

 フレイがルークに差し出したのは、片手で持てるほどの、やや短めの剣。

 ルークの顔に困惑が滲んだ。戦う術など持つなと言ったのはフレイだ。

 手を出すのを躊躇っていると、フレイは苦い顔で頭を掻く。

「正直、こんなもの持たせたくねぇよ。だが、身を護る術は必要だろう。持っているだけで払える厄介事もあるからな」

 扱い方はゆっくり教えてやる。そう言われて、受け取らないわけにはいかなかった。

 ずしりと、それは見た目以上の重みを訴えてくる。だが、今さら突き返せない。最初に我が侭を言ったのは自分だ。フレイを困らせた自覚はある。

 礼を言うべきなのだろうか。それとも。

 何も言えずにいるルークの頭を、フレイがくしゃりと撫で回す。帰るぞ、と言って歩き出しかけて、しかしその足はすぐに止まった。

「そういやおまえ、『船』にいる所、あいつらに見られたか?」

「え?」

 単なる偶然かもしれない。だがもし、『ルークが側にいる船』に、魔物が寄ってくるのだとしたら。それを、町の連中に見られていたら。嫌な予感がした。

 ――そもそも、ルークはなぜ無事だった? フレイには、あれほど明確な敵意を向けてきた魔物が、甲板にいたルークには何もしなかった。

 今は考えても仕方がない。どうせ答えなど、出る筈もない。

 妙な憶測を払うように頭を振って、フレイはふと、森を見た。

 つられてルークも、森を――フレイの小屋の方を見る。

 空を塗り潰すように、黒煙が立ち上っていた。

「まさか……」

「あっ、フレイ!」

 ルークが止める間もなく、フレイは駆け出した。

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