【連載】(タイトル未定)#2-2

※こちらは、超絶遅筆な管理人が、せめてイベントに参加する毎には更新しようという、

雨垂れ石を穿つ精神で投稿する長編(になる予定の)連載ページです。

状況により、過去投稿分も随時加筆修正予定。

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 船から下り、浜から町へ続いている小道を行きかけて、ルークはふと瞬きをした。

 今、何かが視界の端をよぎった気がする。

 きょろきょろと辺りを見回すルークの視界を、またも何かが横切っていった。

「フレイ、ちょっと待って」

「うん?」

「さっきから何か……魔物、じゃないのかな」

「あぁ、気にするな。この辺りは多いんだよ」

 そのまま歩き出したフレイに、ルークも慌ててついて行く。

「多いって、放っといていいの?」

「構わねぇよ。ここいらは、数は多いが人を襲える程力のあるやつはそうそう生まれない。いちいち排除しててもキリがねぇからな。始末するのは、本当にヤバいやつだけだ」

 詳しいな、とは思ったが、ルークは何も言わなかった。町があることを知っていたのだから、その土地柄も少しは頭に入っているのだろう。

 時折揺れる茂みや、不自然な風の唸りを気に留めることもせず、フレイは歩き続ける。ルークも、あまり周りは気にしないようにしながら、黙ってフレイの後をついていった。


 着いたのは、石造りの塀に囲まれた大きな町だった。

 なだらかな坂道に沿った町並みは整然としており、通りを歩く人の数も多い。町の中心を貫く大通りの両脇には、様々な品物を並べた商店が並んでいる。

「変わらないな、ここも」

「来たことあるの?」

「というか、少しの間暮らしてた。俺を覚えているやつは、もういねぇだろうがな」

 フレイの言葉に、ルークは首を捻った。

 赤みがかった金茶の髪に、鋭い目つき。引き締まった長身。フレイの容姿は、遠目にもかなり目立つ。

 数日滞在しただけならともかく、暮らしていたとまで言うのに、誰にも覚えてもらえていない、なんてことがあるだろうか。何か事情があって、住民の誰とも関わらず過ごしていたのだろうか。

 困惑しているルークに、フレイは少し寂しげに笑った。

「あぁ……言ってなかったか。加護持ちは、そうでない者と成長の速度が異なる」

「え?」

「早い者もいれば、遅い者もいる。程度には個人差があるようだが、俺はかなり遅い方だ。ひとの寿命なんざ、とうに超えている」

 ルークは絶句した。この、目の前にいる年若い青年の姿をした男が、普通の人間の寿命より永い時を生きているという。俄には信じられなかった。

「だから、定住できなかったの?」

 ここに着いた時、フレイの言葉や表情にどこか懐古めいたものを感じたのは、きっと気のせいではない。もしも、その特異な事情のせいで、長居できなかったのだとしたら。

 だが、フレイは首を横に振った。

「そのことはあまり関係ねぇな。加護持ちが長命や短命になるのはよく知られた話だし、俺が見た目通りの歳じゃねぇのはみんな知ってた」

「じゃぁ、どうして」

「……人を探している。そいつから、逃げてもいる」

「え?」

 フレイの低い呟きは、いやに重い響きを伴っていた。

 思わず聞き返すが、ふいと顔を逸らされる。今、聞いていい話でないということだろう。ルークはそれ以上訊ねることはしなかった。

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