【連載】(タイトル未定)#2-8
※こちらは、超絶遅筆な管理人が、せめてイベントに参加する毎には更新しようという、
雨垂れ石を穿つ精神で投稿する長編(になる予定の)連載ページです。
状況により、過去投稿分も随時加筆修正予定。
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山道に入るなり、フレイの表情が一変した。携えていた槍を握り直し、軽く振る。
「一人で来なくて正解だ、ラファ。おまえの手に負えるヤツじゃねぇ」
ラファの顔に緊張が走る。心なしか、歩みも遅くなっている。
「そんなに強そうなの?」
「強さも、ですけど、たぶん相性が……」
不安げに辺りを見回すラファ。
「俺が先頭を行く。おまえら二人で、左右をよく見てろ。近くにはいねぇが、油断するな」
ゆっくりと歩き出したフレイに、ルークとラファが並んで続く。言われた通り、左右に視線を走らせるが、ラファは警戒しているというより、怯えているようだった。
「ラファ、大丈夫?」
「す、すみません、大丈夫です。こういう場は、慣れてなくて」
大丈夫と言うが、その表情は強張っている。
ルークは少し考え、隣を歩く背を軽く叩いた。驚いたようにこちらを見るラファに、笑って見せる。緊張がほぐれたのか、ほんの少し、表情が和らいだ。
「ルークさんは、平気なんですか」
「あ、ルークでいいよ。話し方も、そんな畏まらないで」
「で、でも」
ラファは遠慮しかけたが、ルークはフレイのことも呼び捨てにしているし、あまり実年齢には拘らない質なのかもしれない。
周りと成長の速さが異なるせいで、同年代などという括りにはいつも入れなかった。彼ほど割り切って接してくれる方が、よほど気が楽だ。
そう思い直して、ラファは口調をさらに和らげた。
「ルーク、は、加護持ちじゃないの?」
「んーっと、たぶん、違うと思う」
「たぶん?」
「記憶がないんだ」
「え」
あまりにも軽い口調で答えられたので、一瞬何を言われたのかわからなかった。
「嵐の中を遭難してたみたいで、フレイに助けてもらって。名前以外、何も覚えてなくて」
ルークにとって、これはただの事実。
けれどラファは、想像するだけで怖くなった。
どこで生まれ、誰と暮らしていたのか。何を見て、聞いて、どんなことに喜び、悲しんできたのか。
自分という存在を造り上げてきたものを、ルークは覚えていないと言う。ラファは自分のことのように心細くなった。
「不安、だよね……」
「うーん、どうかなぁ?」
記憶がないこと、それ自体には不安や不便を感じていない。それよりも。
「自分に何ができるのか、わからない。それは少し、怖いかな」
夢の中で時折聞こえる、声。呼んでいる? ――否、呼ばれている。
探しにいかなければならない、どこか。あるいは、何か。
その中に、周囲に害を為すものが含まれているかもしれない。それを、自覚できていないのが、怖い。
「ぼくは覚えてないんだけど、魔物を追い返したことがあるらしいんだ。そういう力があるのに、忘れてしまってるんじゃないかって……フレイは、違うって言うけど」
「おいルーク、余計なこと言って、あんまり怖がらせるなよ」
前方から、フレイの声がとんでくる。
いたずらがバレた子どものような顔で、肩を竦めて見せるルークに、ラファは笑った。不思議な二人組だと思った。
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